走れ思想。友のために。
彼が戻らないと友は死んでしまうのだ。
走れメロスのように。
思想は要するに物の考え方で抽象的な存在だった。しかし友を思う気持ちは本物だった。
「思想よ、そなた抽象的な概念の分際で友を救うというのか」
「ははっ。私の思想は【友を大事に】でございます。何より友のために身体を張ります」
「なら走ってこい。指定の時刻までに戻らないと友の首を切るぞ」
走れ思想。友のために。
走れメロスのように。
「よく考えたら僕には走る足は無かったよ。てへっ」
友は首を切られた。
(遠野秋彦・作 ©2014 TOHNO, Akihiko)